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歴史フカボリ散歩|名代官・山村蘇門が詠んだ「巴淵」

久しぶりの快晴が広がった9月30日。

秋の気配を探しに、木曽町日義の「巴淵(ともえぶち)」へ出かけてきました。

 

橋の欄干で一休みしていたのは、アキアカネでしょうか。

周辺を見渡してみると、一部には色づき始めた木々もありますが、紅葉の見頃はまだまだ先のようです。

この日は前日までの雨の影響もあって、水面の透明度は今ひとつ……。

せっかくなので今回は、いつもとは少し違った視点から、巴淵を「フカボリ」してみましょう!

 

 

義仲と巴御前ゆかりの「巴淵」

 

巴淵は、木曽義仲とともに戦乱の世を駆け抜けた女武者、「巴御前」にちなんだ名勝です。

この淵に住んでいた龍神が巴御前に姿を変え、義仲を守り続けた……そんな不思議な伝説も残されています。

義仲と巴の物語とともに、長い年月にわたって人々を惹きつけてきた巴淵。
この場所をさらにフカボリするために、今回ご紹介したい一冊があります。

 

木曽の名代官・山村蘇門が残した『清音樓詩鈔(せいおんろうししょう)』

 

それが、木曽の名代官として知られる山村蘇門(やまむら そもん/1742~1823)による漢詩集です。

蘇門は木曽代官・山村家の9代目として木曽を治める一方、漢学者・文化人としても活躍しました。

『清音樓詩鈔』には、木曽の風景や史跡を詠んだ作品も収められています。
実はこの中に、巴淵について詠んだ詩があるのです。

 

 

名代官が見つめた巴淵

 

蘇門は巴淵を、こんな言葉で詠んでいます。

美人 何れの地にか去る
千載 水悠悠たり
中に盤渦(ばんか)の処有り
猶(なお)巴の字を為して流る

現代の言葉にすると――。

「あの美しい人(巴御前)は、いったいどこへ去ってしまったのだろう。
千年の時を経ても、水は悠々と流れ続けている。
その流れの中には渦巻くところがあり、
今なお『巴』の字を描くように流れている。」

 

……なんとも美しい詩ですね。

巴御前が生きた時代から、蘇門がこの場所を見つめた江戸時代、そして私たちが暮らす現在へ。

人の世が移り変わっても、巴淵の水は絶えることなく流れ続けてきました。

同じ場所に立って流れを眺めれば、私たちもまた蘇門と同じように、遠い時代の人々を思い浮かべることができます。

 

 

義仲の里にも、少しずつ秋の気配

 

木曽町日義は、木曽義仲ゆかりの「義仲の里」。

9月30日現在、巴淵周辺の紅葉はまだ色づき始めたばかりですが、標高の高い木曽駒高原周辺では、巴淵よりも少しずつ秋の色が目立つようになってきました。
巴淵の水面を囲む木々が鮮やかに染まる日も、少しずつ近づいています。
今年はどんな秋の風景を見せてくれるのでしょうか。


参考資料
山村蘇門『清音樓詩鈔』
国文学研究資料館所蔵資料・国書データベース

※紅葉の状況は2026年9月30日現在のものです。